月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。

 閣僚たちもトールヴァルドがそんなことを言い出すとは思わなかったようで、会議室中が騒然となった。

「し、しかしトールヴァルド殿下、<金眼>──いや、<王の目>を持つ貴方様はこの国の象徴であり誇りなのです。そのような方が継承権を放棄するなど許されません!」

「そうです! <金眼>は初代国王陛下の血を受け継ぐ正統なる証なのです!」

「<金眼>を持つトールヴァルド殿下の威光は諸外国にまで及んでおります。故に殿下の動向次第で国交に影響が出るのですよ?」

 閣僚たちはいかにトールヴァルドの存在が国にとって重要かを語り続ける。何とかトールヴァルドを引き留めようと必死なのだ。

 トールヴァルドはこのままでは埒があかないと、最後の手段を使うことにした。

「……そんなに<金眼>が大切なのであれば、この国に捧げます」

 トールヴァルドはそう言って立ち上がると、手を自分の目に伸ばした。

「はっ?!」

「まさかっ?!」

「え、なっ?! 殿下!!」

「トールっ!!!」

 金色に輝く瞳を自ら取り出そうとするトールヴァルドの手を、フロレンツが払いのける。