月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。

 翼はないものの真っ白に輝く綺麗な毛並みに、金色の瞳の美しい狼姿のアウルムは何度見ても神々しい。

「翼は隠せるんだ……! すごい! 不思議! カッコいいよアウルム!!」

『えへへー』

 興奮したティナは、アウルムの背中に飛び乗った。二回目なので躊躇いはない。

「じゃあ、お願いね」

 ティナはアウルムにぎゅっとしがみついた。柔らかいふわふわの毛はすごく気持ちいい。アウルムを撫でて溶けていたルリの気持ちがよくわかる。

『出発するよー』

 アウルムはゆっくり歩き出すと、徐々にスピードを上げていった。走るのが上手だと言っていた通り、安定感があって全く怖くない。

「うわぁ……!」

 流れていく景色にティナは感動する。木々の間から漏れる木漏れ日が光る道となって、ティナたちを招き入れてくれているかのようだ。

 森の中はあまり人が手を付けていないらしく、豊かな自然がそのまま残されている。岩には苔が綺麗に生えていて、人が歩いた形跡はない。

 ティナがふと後ろを振り返ると、アウルムの足跡が残っていないことに気がついた。