月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。

 ティナは魔法鞄の有り難みを再度実感する。一度この便利さを経験してしまうと、もう二度と手放せない。中々中古品が出回らないのも納得だ。
 魔法鞄は超高額にも関わらず常に品切れ状態だった。冒険者なら誰もが憧れるアイテムで大人気の理由も、今なら嫌というほど理解できる。

 ティナたちが市場に着くと、商人や冒険者、観光客で賑わっていた。
 特産品であるチーズはもちろん、野菜や果物も種類が豊富でどれもとても美味しそうだ。

「うわぁ〜。これは迷っちゃうなぁ……」

 チーズだけでもたくさんの種類があり、料理に使うものやそのまま食べるものと、用途も様々だ。

「アウルムはどれが食べたい?」

『どれでも良いよー。何でも食べるよー』

 アウルムに聞いてみたものの、一番困る返事が返ってきて、ティナはさらに迷う。

 食べてみたいチーズが多過ぎて、どれにしようか悩んでいたティナは、ふと気がついた。

(あれ……? 別に選ばなくても、全部買っちゃえばいいのでは……?)

 元々大量にチーズを買うつもりだったのだ。それに今のティナは貴族並みにお金持ちなのだ。お店のチーズを買い占めても懐は全く傷まない。