ティナは弱っていた精霊が元気になった、と聞いて安心した。アウルムから弱っていると聞かされ心配していたのだ。

 それからティナは本を読みながら、精霊が戻ってくるのを待つことにした。

 さっき読もうと思った建国神話は、トールのことを思い出してしまうので最後に読むつもりだ。

「えっと、どれにしようかな……? 『精霊の伝承とその実態の考察』にしようかな?」

 どの本を読もうか悩んでいると、本の中に精霊の生態について考察しているものがあった。
 何となく手に取った本だったが、その内容を読んだティナは「なるほど! そうなんだ!」と納得することが出来た。

 その本には、『精霊は自然豊かな場所にいるが、たまに好奇心が強い精霊が街に降りてくることがある。しかし、自然が少ない場所に長く留まることが出来ない精霊は徐々に弱ってしまう。そんな精霊が休めるよう、人々は家に止まり木となる物を置くようになった』と、書いてあったのだ。

 この宿にいた精霊もきっと、好奇心が強くて街に来たものの、弱ってしまい元いた場所に帰れなかったのだろう。

 だけどアウルムが元気になった、と言ってくれたから、精霊は自然溢れる森の中に帰ったのだとティナは思う。

 そうして、ティナは本を読みながら精霊が戻ってくるのを待っていたが、結局その日の夜に精霊が戻ってくることはなかったのだった。