月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。


 ティナはふと、部屋に飾られているレリーフに目をとめた。
 白い石に彫られている精霊は髪が長く、持っているのは花弁が重なった花で、両親のメモに描かれた絵とよく似ていた。
 ティナがレリーフを見ていると、アウルムも近づいて来てクンクンと鼻を鳴らしている。

『ここから良い匂いがするのー』

「え? ここから?」

『そうなのー。きっとここによく来てるのー』

「え? ええ? 何が? 何が来てるの?」

『うんとねー。精霊ー』

「はぁっ?! 精霊っ?! 精霊がここにいるの!?」

『今はいないよー』

 アウルムの言葉にティナはめちゃくちゃ驚いた。
 トールのそばにいる精霊のことも知っていたし、どうやらアウルムは精霊の存在が認識出来るようだ。

「えっと、今更なんだけど……アウルムは精霊がどこにいるかわかるの?」

『わかるよー。精霊は良い匂いがするのー。あと、光ってるのー』

「ええぇ〜〜……」

 ティナはひどくショックを受けた。どうして自分はもっと早く気付かなかったのか、と。

 トールに精霊がくっ付いていたと聞いた時に、ちゃんとアウルムと話せば良かったのだ。