『僕は王位継承権を放棄します。ただの冒険者となって好きな人と世界を巡りたいんです』

 第二王子の爆弾発言に王宮中が大騒ぎとなった。

 歴代の王族の中でも飛び抜けて優秀で、しかも初代国王と同じ<金眼>を──国を象徴するような存在を、手放す訳にはいかないと焦った閣僚たちは、何とかしてトールヴァルドを引き留めようとした。

 その手段として、トールヴァルドが好意を寄せているという少女を見付け出し、協力を得ようと考えたのだ。
 もしその少女に王太子妃の器があれば、平民でも迎え入れるつもりであった。ブレンドレル魔法学院に在籍していたのなら、身分もしっかりしているだろうし、それなりに優秀に違いない。

 下手に二人の中を引き裂くよりも、まとめて取り込んだ方が良いと閣僚たちは判断した。それぐらいトールヴァルドはクロンクヴィストに必要なのだ。

 そして少女の捜索を始めてみたものの、一向に成果が上がらない。
 少女の足ではそう遠くに行くことは不可能だ。しかも珍しい魔物を連れていると聞いている。ならば、すぐに少女を発見出来る筈だったのだが……。