これから向かうフラウエンロープは、大自然が織りなす景観が素晴らしい場所だという。人の手もあまり入っていないらしいので、きっと精霊がたくさんいるに違いない。

(精霊と仲良くなれたら良いな……)

 ティナは両親が残してくれた種を何とかして芽吹かせたいと思う。

 アデラの話では、精霊に気に入られたら月下草を分けて貰えるかもしれない、とのことだった。それなら、月下草が育つ場所を教えて貰える可能性がある。

 月下草と精霊には密接な関係があるようにティナは感じた。きっと月下草を育てるにしても、精霊の協力は必要不可欠だろう。
 しかしティナは、月下草関係なく精霊と友達になりたいと思う。

 ふと気がつけばすっかり夜は更けていて、アウルムも気持ち良さそうに眠りに落ちていた。
 ティナはアウルムをそっと抱き上げると、テントの中に作っておいた寝床に置き、自身も寝る準備をする。

 毛布を被って目を瞑ると、身体がとても疲れているのを実感する。一日中街を歩き回っていたので当然のことなのだが、楽しくて気付かなかったらしい。

 眠りによって今日という一日が終わり、目覚めることで新しい一日が始まる。新しい一日はどんな日になるだろう、と期待しながら、ティナは眠りについたのだった。