月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。

『できるよー。どんな色でもできるよー』

「本当? これから時々色を変えて貰うかもしれないけど、色を変えるのって疲れない?」

『うんー。 大丈夫だよー』

「良かった! じゃあ、ここから出たら真っ黒になってくれる?」

『うんー。わかったー』

「ふふ、お願いね」

 素直で可愛いアウルムのおかげで、ティナの沈んでいた心が少し浮上する。
 初めに考えていた通りティナ一人で旅をしていたら、きっと立ち竦んで前に進めなかっただろう。

「おや、もう出発ですか?」

「はい、行きたいところがあって……」

「そうですか。また近くまでにお越しの時はご利用下さいね。どうぞお気をつけて」

「はい、是非。有難うございます」

 ティナは支払いを済ませ、宿の主人にお礼を言って宿を後にする。
 もしクロンクヴィストへ来ることがあれば、またここに泊まりたいな、と思う。

 それから宿を出てすぐ、ティナはアウルムに変身して貰った。灰色から毛色が変化し、真っ黒になったので、頭の黒い角も目立たなくなった。

「よーし、じゃあ出発ー!」

「わうわう!」