月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。

「ベルトルドさんお願いします! 絶対無茶はしませんから! 何かあればすぐ連絡しますし、その地のギルドに駆け込みます!」

 ティナの必死さに、ベルトルドは思わずため息を漏らす。
 ずっとこの国に縛られていた彼女に自由を──好きなことをさせてあげたいという気持ちを、ベルトルドはずっと持っていたのだ。

「そうだねぇ。ティナの実力はわかっているし、隣国に行くぐらいなら大丈夫だと思うけれど、誰か護衛として連れて行くなら良いよ」

「護衛?!」

「うん。Dランクとは言え女の子の一人旅なんて危ないからね。信頼出来る人間を連れてきて。私が面接するから」

 ベルトルドの提案にティナは確かに、と思う。それに彼にしてはかなり譲歩してくれたのだろう。

「……わかりました。誰にお願いするか考えます」

「決まったら教えてね。そう言えばこのお金どうする? ギルドに口座を作ってそこに預ける?」

「はい。是非それでお願いします」

 ギルドに登録している冒険者が口座を作ってお金を預けておけば、各国にある支部で自由に引き出すことができる。大金を持ち歩くより安全で効率的だ。

 ティナはベルトルドに挨拶をすると、執務室から出て一階のホールへと足を向ける。
 護衛を引き受けてくれる冒険者を探そうと思ったのだ。