月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。

 席に着いて周りを見渡してみると、店内の様子がよくわかる。客層からして意外と治安は良さそうだ。

 中にはチラチラとティナを見る若い男性も何人かいるが、声を掛けて来る気配はない。近くに住んでいるらしい家族連れがいるところを見ると、料理の評判が良い食堂のようだ。

 しばらくティナが食堂の様子を観察をしていると、テーブルの上に料理が運ばれて来た。
 焼きたてパンに具沢山のスープ、肉汁溢れる鶏のソテーなど、どれもとても美味しくて、裏通りにある食堂なのにほぼ満席な理由に納得する。

 美味しい料理に快適な宿は冒険にとって必要不可欠だ。出発早々良い宿と出会えたことはとても幸運だとティナは思う。
 そんな幸運を運んで来てくれたアウルムは、嬉しそうにお肉を頬張っている。

 ティナはいつもそばにいてくれた存在がいない寂しさを誤魔化すかのように、可愛いアウルムの姿を眺めて癒されることにした。

「なあ、聞いたか? 今セーデルルンドが大変なんだってな」

 そうしてアウルムを眺めていたティナの耳に、気になる言葉が入って来た。

「ああ、聞いた聞いた! 聖霊降臨祭が開けないかもしれないってな」