月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。

 一階は酒場と食堂を兼ねているようで、所狭しと並べられたテーブルはほぼ満席だ。

「あら、可愛いお客さんね! いらっしゃい!」

 料理を運んでいた年配の女性がティナに気づいて声を掛けて来た。

「えっと、部屋をお借りしたいんですが……」

「あら、宿泊をご希望なのね。だったら奥のカウンターで受付をお願いできるかしら?」

「はい、わかりました」

 ティナが給仕の女性に教えられた通り、奥のカウンターへ行くと、この宿の主人らしき壮年の男性がいた。

「おや、いらっしゃい。お一人様で?」

「あの、獣魔が一緒なんですけど、大丈夫ですか? 子犬ぐらいの可愛い子なんですけど」

「そうですねぇ。本来であれば獣魔は外の厩舎でお預かりするんですが……。粗相をしなければ大丈夫ですよ」

「あ、有難うございます! 賢い子なので大丈夫です!」

 ティナはアウルムと一緒に泊まれると言われて安心した。

「じゃあ、これが部屋の鍵になります。部屋は三階の奥の部屋ですね。お食事はどうされます?」

「食事付きでお願いします。獣魔用の肉もお願いできますか?」