月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。

 ティナは慌ててアウルムを追いかけた。ここでアウルムを見失う訳にはいかないのだ。

 そして角を曲がりアウルムが向かったのは、こぢんまりとした小さい建物で、かかっている看板を見ると宿屋のようだった。

「わふわふ!」

「え、もしかしてここに泊まりたいの?」

「わふぅ!」

 アウルムがふりふりと尻尾を振り回している。その顔は何となく誇らしげで、目もキラキラと輝いている。

「じゃあ、ここにしようか。アウルムのお薦めだしね」

「わうわう!!」

 アウルムが嬉しそうに飛び跳ねる。自分の希望をティナが聞いてくれてすごく喜んでいるようだ。

「じゃあ、アウルムも一緒で大丈夫か聞いてくるからここで待っててくれる? 食べ物に釣られたりどこかに行ったりしちゃダメだからね?」

「わふ!」

 アウルムの様子に大丈夫そうだと思ったティナは、「ロリアンの宿」と書かれた看板がかかっている建物の扉を開く。すると、中から楽しそうな、賑やかな声が聞こえて来た。

「わぁ……!」

 一見、小さいと思っていた建物には奥行きがあり、予想よりも中はかなり広かった。