月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。

 本来であれば、冒険者ギルドに行ってベルトルドに連絡を入れるところなのだが、もしトールが自分を探していたら、ギルド経由で居場所がバレるかもしれない──そう考えると、ギルドに足を向ける気になれなかったのだ。

 とにかくトールと会いたくないティナは、トールがいるかもしれない王宮から、なるべく離れたルートでフラウエンロープへ向かおうと考えていた。

「うーん、どこの宿にしようかなぁ……。アウルムはどこが良いと思う?」

 これからの旅のことを考えると、あまり高級な宿に泊まるのはやめた方がいいだろう。
 総じて安い宿は防犯が緩いが、ティナの結界が最強のセキュリティになるのだ。
 快適な宿であれば、多少防犯対策が緩くても問題ない。

「清潔で料理が美味しい宿だったらどこでも良いんだけど……外観じゃわからないしなぁ」

 クロンクヴィストに来るのが初めてなのと変わらないティナには、評判の良い店がどれなのか全くわからない。

 もういっそ勘で選ぶか、とティナが思っていると、アウルムが「わふわふ!」と吠えて駆け出した。

「あっ! ちょっと、アウルム!」