月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。


「イロナさん、今まで本当に有難うございました……っ!」

 突然やって来た別れに、ティナは寂しくて寂しくて仕方がない。
 この一ヶ月の間、モルガン一家と過ごした日々はとても楽しくて、ティナにとってはかけがえのない、一生の思い出となるだろう。

 そして何より、ティナを優しく導いてくれるイロナの存在は、ティナの中でとても大きくなっていたのだ。

 ──綺麗で優しくて、料理が上手で……とても神秘的な、不思議な人。

 イロナとの出逢いは、まるで神様がくれた贈り物のようだ、とティナは思う。

 思わず涙ぐんだティナを、イロナがそっと抱きしめた。
 温かい体温とイロナがつけている香水の優しい匂いに、ティナの涙腺が決壊する。

「ティナちゃんの探しものが見つかることを祈っているわ」

「……っ、はいっ! 頑張ります!」

 ティナは泣きながらも満面の笑みを浮かべて返事した。イロナが応援してくれるなら、こんなに心強いことはない。

 そうしてティナはアウルムと一緒に旅立った。
 本来の目的であった、月下草の栽培場所を探すために。