「えっと、他の紙は……っと。あれ? 地図? 何か書いてある……」

 月下草の説明が書いている紙の他にも数枚の紙が入っており、ティナはそれを一枚一枚広げていく。それはバツ印が入った地図や地名などが書かれた大量のリストであった。

「もしかして……月下草の自生場所の候補かもしれないね」

 ベルトルドが言う通り、ティナの両親は月下草を見付け、育てたかったのかもしれない。地図の印や地名を見ると、どの場所も辺境の地だったり森や山の奥を示している。

「両親は、月下草を育てたかったのでしょうか?」

「多分そうだろうね。あの二人のことだから、きっと人助けをしたかったんじゃないかなぁ。二人共超が付くほどのお人好しだったしね」

 ティナの両親は高位の冒険者であったが、困っている人がいると放っておけず、誰にでも手を差し伸べる優しい人達だった。
 そんな両親に助けられた人間は数しれず、それは冒険者達にとっても例外ではなく、両親に助けられた彼らは未だに二人をとても尊敬しているという。
 それは恩人の娘であるティナを、冒険者達が可愛がる理由の一つとなっている。

 しかしベルトルドがティナの両親を「お人好し」と称するのは、子供を盗賊から助けるために命を落としたからだ。