月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。

「えええっ?! ど、どうしてわかっ……いや! 何でもないです!!」

 もう顔はすっかり元通りになったと思っていたのに、鋭いイロナには泣いたことを一瞬で見抜かれてしまった。

「……トール君と話をしたのね」

「えっ! ……あ、そっか。イロナさんにはお見通しですよね……。はい、トールから色々聞きました」

 ティナはそう言えば以前、イロナがトールに何か意味深なことを言っていたな、と思い出す。
 今考えれば、確かにあの時の話の内容はこの状況を暗示していたように思う。

「ティナちゃんはどうしたいの?」

「どうしたいか……。そうですね……今はとにかくトールに会いたくないです」

 トールがここに戻ってくるまでもうしばらく時間がかかるだろう。あの結界は永続的なものではなく二、三時間ほどで効果が切れるように作ってある。

 だから二時間後ぐらいにはトールと顔を合わせることになるのだが、ティナにはもっと時間が必要だった。

(あんな別れ方しちゃったしなぁ……すっごく気まずくなっちゃうだろうなぁ……)