月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。

 ……トールごと結界に閉じ込めてしまったけれど、あながち間違ってはいないよね……と、ティナは心の中で言い訳する。

「よし! じゃあ、俺はトールを迎えに行ってくる! あ、裏の厩舎に馬車を停めてるんだわ。イロナたちはそこにいるから、顔出して安心させてやってくれや」

「はい、わかりました。モルガンさんもお気を付けて」

 オルガンを見送ったティナは、イロナたちが待っている馬車へと向かった。

 そうっと馬車に近づいてみると、「わふぅ!」とアウルムが嬉しそうに尻尾を振ってやって来た。

「あ、アウルム! アネタちゃんたちを守ってくれて有難うね」

「わふわふ!」

 アウルムを抱き上げ、よしよしと頭を撫でると、アウルムはとても気持ちよさそうに目を細める。

 以前は真っ黒だったアウルムの毛色は、今はもうすっかり灰色になっていた。このままいけば近いうちに真っ白になりそうだ。

「ティナちゃん?」

「うぇっ?! あ、イロナさん!」

 ぼんやりと考え事をしていたティナは後ろから声を掛けられ、思わず変な声を出してしまう。

「良かった! 無事だったのね……って、あら? もしかして泣いた?」