「私はヴァルナルの妻であり相棒なの。ヴァルナルを助けられるのは私だけよ。だから最後まで彼と共にいるわ」 

 リナは笑顔でそう言うと、魔法で眠っているティナを抱き上げ、ぎゅっと強く抱き締める。

「ティナ……一緒にいられない私たちを許してね……。誰よりもあなたの幸せを願ってる……愛してるわ」

 リナはティナの頬にそっと優しくキスをした。慈しむように、忘れないようにと。

「一瞬だけ結界の一部を開くから、出来るだけ遠くに逃げるのよ」

 リナはテントの裏の、死角になっているところへトールを連れていくと、結界に触れながら呪文を詠唱する。

 すると、リナが触れた部分の結界に、小さな穴が出来た。ちょうど子供が通れるぐらいの大きさだ。

「すごい……!」

 トールはリナの巧みな魔力操作に驚いた。
 こんなに強固な結界を、一部だけとはいえ解除できるリナは、かなり優秀な魔法使いのようだ。

「トール、ティナをお願いね」

 リナはそう言うと、抱いていたティナをそっとトールに渡す。
 <軽量>の魔法を掛けていると言っていた通り、ティナはとても軽く、ほとんど重さを感じない。