月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。

「……トール、眠る前に話がある。聞いてくれるか?」

 不意に、ヴァルナルがトールに話を切り出した。その顔はいつになく真剣で、緊迫した雰囲気が伝わってくる。

「はい」

 だからトールも緩みそうだった気を引き締め、真剣な表情でヴァルナルと向き合った。これから聞かされる話はかなり重要な内容なのだろう、とそんな予感がしたのだ。

「まだ子供のお前にこんな話をするのもどうかと思ったが……。お前はかなり頭が良いし大人びているからな。それに将来有望だ。もしこの先の未来でティナが困っていたら、どうかティナを助けてやって欲しい……頼む」

 ヴァルナルはそう言うと、トールに向かって深く頭を下げた。

「えっ?! ヴァ、ヴァルナルさん?!」

 突然、ヴァルナルに頭を下げられたトールは困惑する。
 それにトールにとってティナを助けるのは当然のことで、頼まれなくてもそうするつもりだ。

「もちろん僕はティナを守るよ! 約束するよ!」

 トールの言葉を聞いたヴァルナルは顔を上げると、嬉しそうに、にかっと笑った。