暗殺者の狙いは自分なのだと、だからここで別れようと打ち明けたトールに、ヴァルナルは烈火の如く怒った。『お前は俺をそんな薄情な人間だと思っているのか?!』と。
 もちろんトールはそんなことを思っていない。けれど、自分のせいでヴァルナルやリナ、そして何よりもティナを──危険な目に合わせたくなかったのだ。

 しかしヴァルナルもまた、トールのそんな気持ちを痛いほど理解出来た。
 だから『お前はもう、俺の仲間だ。仲間を助けるのは当然だろ?』と、トールが負担に思わないように言葉を選んで伝えたのだ。

 ヴァルナルが自分を「仲間」と言ってくれたことが、トールは心の底から嬉しかった。今まで腫れ物を扱うかのようにしか接して貰えなかったからだ。

(……どうして……どうしてこの人は、こんなに優しいんだろう……?)

 トールはヴァルナルのように、懐が深く強い男になりたいと心から願う。
 ヴァルナルとの出会いは、トールに強い影響を与えることになったのだ。



 リナとティナの様子を見ながら、トールがどうするべきか悩んでいると、ヴァルナルがテントの中に入って来た。