月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。

「そうだよ! イリンイーナで見たお月様とそっくり!」

「イリンイーナ? 随分遠い国だね」

 イリンイーナはここから遠く離れた場所にある自然豊かな国だ。地元民から神聖視されている広大な森があるという。

「うふふ! わたし冒険者だもん! どこでも行くよ!」

 ティナはかなり好奇心旺盛で、将来は両親のように冒険者になりたいと言う。

 そんな人懐っこく明るいティナとトールが打ち解けるのに、そう時間は掛からなかった。
 二人はセーデルルンド王国へ移動する間、ずっと一緒に過ごすほど仲が良くなっていった。

 ずっと王宮に閉じ込められるように過ごしていたトールは、生まれて初めての旅に心を躍らせる。そして自分がどれだけ狭い世界で生きていたのかを自覚したのだ。

 見るもの全てが新鮮で、ヴァルナルから教えて貰う知識や技術はとても面白く、トールはこの旅で学んだことを脅威の速さで吸収していった。

 ちなみにヴァルナルの妻であるリナが実はA級冒険者だと知った時、トールはめちゃくちゃ驚いた。美しくおっとりとしたリナはどことなく気品があり、貴族の出だと言われても納得できるほどだったからだ。