月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。

 しかし、ティナが驚いたのはトールの整いすぎた顔を見たからではなかった。
 ティナが本当に驚いたのは、トールの瞳の色が<金眼>──いつかイロナから聞いた、王者の素質がある者が持つと言われている色だったからだ。

 トールの瞳を正面から見たティナの心臓がどくん、と跳ねる。

(……あ、れ……? この瞳、どこかで……?)

 ティナはトールの瞳に既視感を覚えた。
 アウルムの瞳を見ても、綺麗だとしか思わなかったのに、トールの瞳を見た瞬間からずっと、心がざわざわと落ち着かなかったのだ。

「……今まで素顔を隠していたのは、その瞳の色が理由なの?」

 ティナの考えが正しければ、トールはクロンクヴィストの王族で──第二王子なのだろう。
 大国であるクロンクヴィストの王族で、<金眼>持ちなんて存在は、学院では目立ち過ぎてしまう。

「別に俺の身分がバレるのは構わないんだ。そんなことはどうでもいいし」

 トールの言葉に、ティナの頭の中は疑問符でいっぱいになる。彼は自分の身分に全く興味がないらしい。
 なのになぜ素顔を隠していたのか、ティナには全くわからない。