月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。

「……っ、」

 初めて、まともにトールの顔を見たティナが息を呑む。

 眼鏡が弾き飛ばされた時、一瞬見えたトールの瞳の色は、やはり見間違いじゃなかったらしい。

「……トール、その瞳の色って……。やっぱり……」

 ティナはトールと出会った頃から、彼の素顔を想像していた。
 彼の目は見えないものの、綺麗な口元を見る限り、きっと鼻筋が通っている顔立ちなのだろう、と思っていたのだ。
 吊り目なのか垂れ目なのか、もしかしたら糸目かも、なんて想像して暇を潰したこともあった。
 だけど実際のトールの目は、想像していたものとは全く違っていたのだ。

「うん。こんな形でティナにバレるとは思っていなかったけどね」

 トールはもうティナに素顔を隠すことをやめたらしい。彼は眼鏡をかけずに、じっとティナを見つめている。

 かきあげて少なくなった前髪の下にあるトールの顔は、ティナの想像していた顔より遥かに整っていて、とても綺麗だった。
 もし学院で素顔を晒していたら、女生徒一人残らずトールに一目惚れしていたかもしれない。きっと学院中大騒ぎになっていただろう。