普通の盗賊はもっと荒々しく、それぞれが好き勝手に動き、武器も多種多様のため、ある意味厄介な存在だ。
 しかし今回の盗賊たちは全員が剣を使い、統率も取れていた。

 この戦いがティナたちに有利であったのも、彼らがちゃんとした訓練を受けた者で、動きが読みやすかったからだ。

 おそらく、この盗賊たちは何かの目的を持ってトールを狙ったのではないか、とティナは思う。
 そのことについて心当たりがないかトールに聞いてみたいと思うものの、ティナにはそのことよりももっと、気になっていることがあった。

「……えっと、トール……その、これ……」

 ティナがトールに眼鏡を差し出した。先ほどリーダーの男に弾き飛ばされた眼鏡をティナが拾ってきたのだ。
 盗賊たちを無事討伐し、お互い無傷なのに、ティナの表情には戸惑いの色があり、どことなく落ち着きがない様子だ。

「有難う」

 ティナから眼鏡を受け取ったトールが、優しく微笑んだ。

 いつもなら口の形で表情を読み取る必要があったのだが、今のトールにその必要はない。
 何故なら、トールが眼鏡を掛けず前髪をかきあげたので、顔がはっきりと見えるからだ。