月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。

「っ?!」

 スクロールが引き裂かれた瞬間、トールの足元に影のようなものが広がると、影から黒い鎖が飛び出し、トールの身体に巻き付いていく。

「わははははっ!! どうだっ!! 動けないだろうっ?! そらっ!! 全員でかかれっ!!」

 まだ動ける盗賊たちが次々とトールに襲いかかる。どうやら盗賊たちは初めからトールを狙っていたようだ。

 ティナと戦っていた盗賊たちも、リーダーらしき男の指示に従ってトールへと標的を変えてしまう。

「っ!! <ディスペル>!!」

 ティナはトールに向かって咄嗟に手を伸ばすと、解呪のための魔法名を唱えた。
 すると、トールを雁字搦めにしていた黒い鎖が”パキィイイイインッ”という音と共に粉々に砕け散る。

「何ぃっ?!!! 馬鹿なっ!!!」

「ティナ、有難う!!」

 貴重なスクロールを使ってまで、トールを捕らえようとしたリーダー格の男であったが、一瞬で解呪されてしまい驚愕する。
 もし、ここにいるのが<聖女>でなければ、彼の思惑通りに事が進んでいただろう。 

「くそぉっ!! どうなってるんだっ?!」

「貴重なスクロールが……っ!!」