月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。

 ──ブライトクロイツの途中にある森の中で、20人ほどの盗賊の一団がティナたちの行く手を阻んだのだ。

 もしかすると、護衛の冒険者がいないと勘違いしたのかもしれない。
 しかし森の中とはいえ、首都に近い場所で盗賊が出るのはめちゃくちゃ不自然だ。しかも盗賊にしては何となく小綺麗で、まるで盗賊の真似事をしているかのようだった。

 ティナが今まで遭遇した盗賊はもっと汚らしく、飢えているからか、やたら目がギラギラしていたのだが、見たところこの盗賊たちからは飢えではなく、ただ殺気しか感じない。

 トールが盗賊たちの指示に従うように、御者台から降りて来た。
 ティナがトールの方へ視線を向けると、合図するようにトールが小さく頷いた、と同時にツヴァイハンダーを手にして盗賊のリーダーの男へと切り掛かる。

「うわぁっ?! こ、こいつ……っ!!」

 不意を突かれたリーダーが咄嗟に剣で防御するが、トールのツヴァイハンダーに持っていた剣を弾かれる。

「っ?! くそっ!! お前らかかれっ!!」

 盗賊たちの注意が一斉にトールへと向かう。