「ち、父上……! それはクリスティナが、私を裏切って下賤な者たちと通じていたからで……っ!」

「お前が言う下賤な者たちとは、どこの誰のことだ?! お前はちゃんとその者たちのことを調査したのだろうなっ?!」

「あ、いや、それは……っ」

 フレードリクは返答に躊躇する。アンネマリーの話を聞き、怒りで我を忘れたまま冷静な判断が出来ず、調査も何もしなかったからだ。

「しかしアンネマリーが嘘をつくはずがありません!! クリスティナは賤しい男たちと親しい仲だと……っ」

「黙れっ!! お前はこの国の冒険者たちを敵に回すつもりかっ!!」

「──え?」

「お前たちが言う下賤な者たちとは、冒険者ギルド王都本部に所属する優秀な冒険者たちのことだっ!! お前は冒険者たちを侮辱したのだぞっ!!」

 この国に限らず、冒険者は無くてはならない存在である。しかも冒険者ギルドに入るためには試験が必要で、ある程度腕に覚えがある者でないと冒険者になることはできないのだ。
 それが一国を統括する本部の冒険者たちであれば、その実力は疑うべくもなく、また同時に身元が保証されていることになる。

 確かにアンネマリーは嘘をついていない。しかし正しい情報でも無かったのだ。

「……っ?! そ、そんな……っ!!」

 フレードリクが己の所業を悔いても既に時は遅く、<聖女>の加護を失った王国は衰退の一途を辿ることになる。