「でも聖女様の結界に守られてんだろ? 気の所為じゃね? あーあ、俺の国にも聖女様が現れてくんねーかなぁ」

 世界中でも聖女の恩恵を受けている国はごく僅かだ。アコンニエミ聖王国とセーデルルンド王国の他には、あと一カ国しか無いと聞いている。
 その一カ国も聖女がいるわけではなく、聖女が残した遺物が国に恩恵を与えているという。

(結界かぁ……。そう言えば、もうすぐ聖霊降臨祭だっけ。……まあ、アンネマリー嬢がいるし、大丈夫でしょ)

 セーデルルンド王国の話を聞いたティナは、ベルトルドのことを考えて心配になる。もしかすると王室や神殿からティナの行方を追求されているかもしれないからだ。

 しかしトールとの決闘に敗れたアレクシスが神殿に戻れば、聖国と王国にティナと関わらないように嘆願してくれるだろう。

(聖騎士の決闘は敗者に絶対的な誓約が課せられるから、反故に出来ないし……)

 決闘後、トールがアレクシスに強く要求することなく放置していたのも、誓約の強制力のためにアレクシスが必ず約束を守るとわかっているからだ。