月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。

「ティナちゃん、<エイワズ>は悪い意味だけじゃないのよ。この場合は何かが終わる──いえ、何かを終わらせる暗示ね」

 ”死”という言葉に反応してしまいがちが、<エイワズ>は何かが終わることで新しいことが始まる──終わりを意味するが故に、何かのはじまりも意味する文字だ。
 つまり、変化の時期であり、変化が必要な時期でもあるのだと解釈できる。

「終わらせる……」

「そう。終わるからといって失う訳ではないわ。在るものは在り続けるし、これから得られるものも沢山あるの。恐らくだけど、けじめを付けなさい、ということだと思うわ」

 トールはイロナの言葉をじっと聞き続ける。きっと彼には思い当たるフシがあるのかもしれない。

「……イロナさんは、どうして俺に……」

 表情はわからないが、トールはイロナを不思議そうに見ているのだろう。
 トールから問いかけられたイロナは、慈悲深い笑みを浮かべて言った。

「私は貴方たちをとても気に入っているの。そんな貴方たちに幸せになって欲しいって思うのは、当然のことでしょう?」

 どうやらトールの占い結果には、ティナも関わっているようだ。

「終わりを受け入れる覚悟を持つことが大切よ。受け入れてこそ新たなはじまりがやってくるの。……もうわかるでしょう?」

「……はい」

 イロナがリーディングした石の意味は、トールの心に深く刺さったようだ。顔は見えないが、真剣な表情をしているのだろう。

 占いの内容的にどことなく寂しげな雰囲気を感じるが、イロナの占いはトールのためになるはず、とティナは信じている。