「どこで手に入れたのかは聞いてないなぁ。……でも、ツヴァイハンダーを使いこなせるなんてトールは本当に凄いよね。どうしてあんなに戦い慣れているの……?」

 ツヴァイハンダーのことよりも、ティナが一番気になっていたのはトールの強さだった。

 しかしティナは、トールに質問したことを早々に後悔する。興味本位で聞いてはいけないことのように思ったからだ。

「あ、ごめん……っ! 今の忘れて──」

「生きるためだよ」

「──……え?」

「生き抜くために、俺は強くなきゃいけなかったから」

 トールが教えてくれた答えは、ティナの予想よりも遥かに重いものだった。

 ただシンプルな答えの中に、トールが抱えているらしい複雑な事情が垣間見えて、ティナはやっぱり質問したことを後悔した。

 よく考えてみれば、ティナはトールのことをほとんど知らなかったのだ。

 隣国であるクロンクヴィストからの留学生で、同じクラスで、休みがちだったティナに見返りを求めること無く親切にしてくれて──。

 クロンクヴィスト出身とはいえ、実家のことも、貴族なのか平民なのかすら、ティナはトールのことを知らなかった。

 実際はトールのことを何も知らなかったのだと気付いたティナは、もっと彼のことを知りたいと思う。
 だけど、自分がどこまで踏み込んでいいのか、その境界がわからないティナは戸惑ってしまう。