月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。

 トールは絶望しているアレクシスを一瞥しながら言った。

「多分大丈夫だと思うよ。これを機に成長してくれたら良いけど……まあ、本人次第だね」

 アレクシスがティナを想う気持ちは本当だった。
 もし彼の思惑通り事が進んでいたら、今頃ティナは聖国に連れて行かれていただろう。
 そうなれば、もう二度とティナとは会えなくなっていたはずだ。

 ティナが婚約破棄された時、彼女が神殿を頼らず、ベルトルドを頼ったことは僥倖だったな、とトールは思う。

「……ねえ、聞いてもいい?」

「ん?」

 トールの決闘を見ていたティナは、不思議に思っていたことを思い切って聞いてみることにした。

「えっと、どうやってあの剣を切ることが出来たのかなって。神聖力と親和性が高い鉱物で作られているらしいから、かなりの硬さだったと思うんだけど」

 聖騎士が持つ剣は、ただ振るだけなら切れ味が良い剣だが、神聖力を流すことで硬度と鋭さが増すと、ティナは聞かされていたのだ。

「ああ、アレクシス卿の真似をして、俺もツヴァイハンダーに魔力を流してみただけだよ」

「えっ?! そうなの?!」

「うん。お父さんの形見って話だけど、あのツヴァイハンダーってどこで手に入れたんだろうね。何の鉱物で出来ているのか知りたいぐらいだよ」

 冒険者だったティナの父親の遺品は、ただの武器ではなかったらしい。もしかするとかなり希少で価値がある、それこそS級ランクの武器なのかもしれない。