「じゃあ約束通り、聖国と王国はティナに金輪際関わらないこと。ティナが望まない以上、聖女として扱わないこと。あ、これには神聖力の行使も含まれるから。それと──」

 トールが次々とアレクシスに要求を突きつける。しかし決闘したのはトールなのに、その内容はティナを守るためのものばかりだ。
 そんなトールに、ティナはどんどん彼に惹かれていく自分を自覚する。

「出来る限りのことはするが、全ての約束を守るのは……っ」

 トールの要求を聞いたアレクシスが言い淀む。

 実際、全ての要求を飲むのはアレクシスの立場ではさすがに無理だろう、とティナは思っていたのだが、どうやらトールはそう思っていないようだ。

「そこは死ぬ気で頑張って貰わないと。命を助けたんだし、必死にやれば約束は守れるはずだよ。それに…………アレクシス卿には頼りになるお父さんやお兄さんがいるじゃないか」

「──っ?! な──っ?!」

 トールの言葉の後半は声が小さく、ティナにはよく聞こえなかったが、言われたアレクシスは驚愕した表情をトールに向けている。

「ティナに嫌われたくなかったら、ちゃんと約束を守ってくれ。じゃないとアレクシス卿がティナを手に入れるために今まで何をしていたか……彼女に話さなきゃいけなくなる」

「っ?! ど、どうして……っ?!」

 アレクシスは何故トールが自分たちの内情に詳しいのか、不思議で仕方なかった。
 トールの持つ情報は王国の大神官ですら感知していない、知らない内容のはずなのだ。