「ティナはどっちに勝って欲しい?」

「えっ?! そりゃあ、トールだけど……!」

 聖騎士から決闘を申し込まれた状況なのに、トールは全く焦っていないようだ。むしろ余裕さえあるように感じてしまう。

「了解。じゃあ行ってくるよ。危ないから、ティナは後ろに下がってて」

「ええっ?! で、でも──」

 未だに納得できないティナに、トールは優しく微笑んだ……ようだ。

 安心させようと微笑んでくれたトールを見たティナは、きっと彼なら望みを叶えてくれる──そんな気になってしまう自分を不思議に思う。

 学院にいた頃からずっと、トールはこんな感じでどんな困難や障害も、飄々と乗り越えていってしまうのだ。

 トールが決闘を承諾した以上、誰にもこの戦いを止めることは出来ない。ならば、万が一トールが怪我をしたとしても、傷一つ残さないぐらい、全力で治癒魔法を行使しよう、とティナは思う。

「決闘を受けたことは評価しよう。しかし、私は一切手加減しないぞ。もし命が惜しいなら、さっさとここから立ち去れ! そして二度とクリスティナ様の前に現れるな!! そうすれば腕の一本で見逃してやる!!」

 アレクシスがトールに提案した。本来であれば聖騎士との決闘など自殺行為なのだ。しかしこう提案してやることで、トールが尻尾を巻いて逃げるだろうとアレクシスは思っていたのだが──。