(な、何かっ!! 何か言葉は……っ!! もうトールってば、どうしてそんな事言うのーーーーっ!!)

 茹だった頭では全く考えがまとまらず、ティナは呻き声をあげることしか出来ない。

「アウルムは良いなぁ。ティナに甘えられて。俺も甘えたい」

「ふぁっ?!」

 今日のトールはどこかおかしい。心の声がだだ漏れだ。

(え? え? 何? 何なのっ?! この状況は一体何? 何が起こっているの?!)

 最早混乱の粋に達しているティナに気づいているのかいないのか、トールはティナを見て優しく微笑んだ……ような気がする。

「たまには俺もかまってよ」

 そう意地悪く、いたずらっぽく言うトールに、ティナはとうとう撃沈した。
 恥ずかしくて恥ずかしくて、トールの顔を見ることが出来ず、俯いてしまう。

(……………………もうダメ……助けて……っ)

 混乱しながらもよく考えれば、確かに旅の間中ずっと、ティナはアネタに構いっぱなしだった。更にアウルムを拾ってからは、トールと二人っきりの時間はほとんど無かったのだ。

 ならば、これからはもう少しトールとの時間を大切にしよう、とティナは思う。

「…………うん」

 何とか返事をしたティナだったが、その声はとてもか細くて、トールに聞こえたかわからない。
 だけどトールが笑う気配がしたからきっと、ティナの声はちゃんと届いたのだろう。