月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。

「……ティナ。打ち明けて大丈夫?」

「うん、どうせいつかはバレるだろうし、それなら自分から話した方が良いかなって」

「……確かに」

 トールが納得してくれたことで、ティナの気持ちが軽くなる。
 正直、ティナは元聖女だと気付かれたくなかった。しかし、遅かれ早かれイロナにはバレるだろうな、という予感もあったのだ。

「……うっし! わかった! ティナは優秀な魔法使いってことで! うん、それで行こう!」

 頭の中の整理が終わったモルガンは、ティナが聖女であった事実を知らなかったことにするらしい。無理矢理自分を納得させたようだ。

「……有難うございます、モルガンさん」

「いや、俺も聖……ティナには随分世話になったんだよ。それに何となく訳ありだろうって思ってたしな。さっきも言った通り、誰にも言わねぇから安心しな」

「え? 世話なんてしましたっけ?」

「国中を浄化してくれただろう? そのおかげで俺たち商人は無事に商売が出来るんだよ」

 ティナが<瘴気>を浄化しなければ、街道は閉鎖され流通は停滞し、物資を運ぶことも売ることも出来なくなる。正に商人にとっては死活問題なのだ。