月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。

「俺も初めて食べましたけど、本当に美味しいですね」

「だろ? イロナの料理はうめーんだよ!!」

 トールもイロナの作った料理を絶賛している。モルガンの喜びようにも納得だ。アネタも美味しそうにもぐもぐと食べている。

 イロナの料理を思う存分楽しんだティナは、初めて食べたエヴェルス料理をすっかり気に入ってしまった。

 そうして、モルガン一家と一緒に食事を楽しみ、片付けを終える頃にはすっかり夜も更け、アネタの就寝時間となっていた。

「火の見張り番はどうするよ? 俺も人数に入れてくれて良いんだぜ?」

 本来なら護衛の役目である寝ずの番も、ティナを考慮してくれたのだろう、モルガンが申し出てくれた。

「お気持ちは有り難いのですが、モルガンさんは御者もしてくれていますし、ゆっくり休んで下さい。夜は俺が見張りますよ。徹夜には慣れていますから」

「でもよお……」

 トールの提案をモルガンが渋る。彼に負担が掛かることを気に病んでいるのだろう。

「それなら大丈夫! 私に任せて!」

 ティナがトールとモルガンに向かって、明るい声で言った。そんなティナを二人が不思議そうに見ている。