「……航太、マジで反省して」

「マジで反省してるって」

「俺、初めてお前に殺意わいた」

「ちょ、怖いこと言うな。心の友だろ?」

「だいたい航太は昔から調子に乗りすぎなんだよ。もっと後先考えて行動しろ。子供じゃないんだから。あと、森下さんの気持ち考えろ」

「いや、今回は本当に本当に反省してる」

「次はないからな」

「わかってるよ。うう、杏介が怖い」

しくしくと泣き真似をする航太に杏介はまたため息をひとつ。
好きな人とそんな関係になったらそりゃ浮かれるだろうなと同情もあり――。

「……彼女のこと大事にしろよ」

ポツリと呟けば航太はガバリと杏介に抱きつく。

「杏介、いい奴」

「わかったわかった」

仲良し同期の背中をトントンと撫でる。

――と。

ガタタッ!

激しい音が聞こえてそちらを見やる。
事務室の扉前で数人の女性社員が崩れ落ちていた。

「やばいっ。小野さんと滝本さんってそういう関係?!」

「まさかうちの店舗でBL?」

「前々から怪しいと思ってたけどまさか本当にそうだったなんて――」

口々に好き勝手言いキャーキャー騒ぎ出す。
そして――。

「うそ、航太先輩……」

青ざめたリカがそこに立っていた。

「ちがっ、ちょ、誤解っ!」

「ドンマイ航太」

「おまっ、杏介! 否定しろよ!」

「はいはい、仕事するぞー」

てんやわんやのなか航太だけが弁明に走り、今日も平和に彼らの日常は過ぎていくのだった。


【END】