(布団って、こんなにも柔らかいものだったっけ?)

あの家では、絆はソファに座ることすらまともになかった。家事のため、早く起きなくてはならず、ベッドでゆっくり眠ることができず、起きれなさそうだと判断した時には椅子に座ったまま寝ることも少なくなかった。

「光里姉、あたし、生きてていいの?」

涙で目の前がぼやける中、絆は震える唇で言葉を紡ぐ。光里は一瞬驚いた顔をしたものの、すぐに力強い笑顔を見せた。

「当たり前でしょ!この世界に、生きていちゃいけない人なんていないんだよ!絆がいなくなったら、すごく寂しい」

その言葉が、ただ嬉しかった。家事をする使用人ではなく、たった一人の人間として光里は絆を見ている。絆の口から嗚咽が漏れ、光里にさらに強く抱き締められる。

その日、絆は数年ぶりにゆっくり眠ることができた。



次の日から、光里は絆の家に話し合いに行くようになった。その間、絆はホテルの部屋でのんびりテレビを見たり、ベッドの上で寝転んで過ごした。