星みたいな恋をしよう

誰かに言い聞かせているような言葉に、絆は光里の腕の中で首を傾げる。数十秒後、ゆっくりと光里と絆の体は離れていく。その時、光里の黒真珠のような目は潤んでいた。

「光里姉?」

絆の問いに光里は答えることなく、背中を向けて去っていった。



それから、光里のことを絆が見掛けることはなくなった。最初は留学しているから仕方がないと思っていたのだが、一年近くが経った後、勝がイライラとした様子で帰って来て、ビールの缶を開けた後に言ったのだ。

「あいつ、離婚することになった。光里と雪子(ゆきこ)が逃げてモラハラで訴えたらしい!生意気な女共だ!!」

雪子とは、光里の母親だ。結婚をする前は看護師として働いており、離婚をする前から働いていたらしい。勝の弟と結婚していた。

「……もう、光里姉には会えないの?」

離婚という言葉がまだよくわからない絆が訊ねると、「うるさい!!黙れ!!」と勝に怒鳴られ、文庫本を投げ付けられた。