「……結構です」

絆はそう言い腕を振り解こうとしたものの、強く掴まれた腕は今度は解けなかった。

「離してください」

「離さない」

YESと言うまで離さないと言いたげな目をオスカルはしていた。絆はグッと唇を噛み締める。もう一度振り解こうとしたものの、やはり腕は拘束具が取り付けられたかのように動かない。このままでは埒が明かないのは確実だ。

「……家まで送ってください」

俯きながら絆は小声で言う。オスカルは「かしこまりました、姫」と嬉しそうに言い、腕を掴んでいた手を離す。だが、手がようやく離れたと思った束の間、今度は手を優しく取られて握られてしまった。

「ちょっと!ここまでする必要性を感じられません!」

手を繋いで歩くなど、まるで恋人同士がすることのようだ。顔を赤くして怒る絆に対し、オスカルはニコニコと笑っている。

「照れてるの?嬉しいなぁ」

「決して照れてはいません!」

そんなやり取りをしながら、絆はカフェの反対方向にある駐車場へと連れて行かれる。そこには一台の大きな白い車が止められていた。