そう言われて抱き寄せられ、キスをされそうになったことは今でも覚えている。エマがオスカルを引き剥がしてくれたのでキスは未遂に終わったものの、思い出すたびに絆の顔は赤くなってしまう。

(調子狂う……)

俯いている絆を前に、まだオスカルは恋愛映画のような甘い台詞を言い続けている。道行く女性たちが顔を赤く染め、「あの人、情熱的ね」と話し始めたため、絆は口を開く。

「いい加減にしてください!恥ずかしいので黙ってください!」

「えっ、照れてるの?」

「照れてません!」

「絆、可愛いね」

「可愛くありません!」

絆は息をフウッと吐くと、オスカルにクルリと背を向けて歩き出す。このまま話していては、永遠に家に帰れないと思ったためだ。

「絆、どこに行くの?」

「家に帰ります」

「なら、家まで送るよ」

オスカルに腕を掴まれ、進もうとする体が強制的に止められる。絆が少し顔を上げれば、心配そうな顔をオスカルはしている。