直太は、その日は早めに帰ってきた。

よほど、私とアキのことが心配だったみたい。

晩御飯にアキと二人で出かけなくてよかった。

「アキはあれからすぐに帰った?」

帰宅するなりアキの話だ。

相変わらずしつこい。

今はあまりアキの話題に触れてほしくないんだけどな。

「あ、ああうん。イラストの打ち合わせが終わったら、とっとと帰っていったわよ。」

「ん?えらく突き放したような言い方するな。何か不機嫌になるようなことでもされたか?」

私の脳裏に、アキに抱き締められた時のことがよみがえる。

いやだ、胸がきゅうと切なく痛んだ。

「ハル?どうした?」

直太が心配そうに私の顔をのぞき込んだ。

私は慌てて、脳裏に浮かんだ情景をかき消す。

「いや、別にどうもしないわよ。」