「いえいえ、全然大丈夫ですよ。」
 
女性の影にかくれるようにして、かわいらしい男の子が私の顔色をうかがっていた。

「あ、お子さんですか?こんにちは。」

女性は、子どもを促すように「ほら、挨拶なさい」と軽く手をひっぱった。

「こんにちは。」

男の子は上目遣いで私をチラッと見て言った。

「ボクは、お名前は何て言うのかな?」

子どもとお話するのなんて何年ぶりかしら?

「・・・みやもと ゆうき。」
 
「おいくつですか?」

あまりにかわいいので、私はその女性に尋ねた。

「もうすぐ4歳になります。」

とても爽やかで笑顔のきれいな女性だった。

まさに絵に描いたような素敵なお母さん。

私もいつかこんなお母さんになれるんだろうか。

足元のサッカーボールを拾って、ゆうき君にそっと手渡した。

「ありがとう。」

ゆうき君は、恥ずかしそうに笑うとサッカーボールを両手でぎゅっと抱き締めた。

「サッカー好き?」

ゆっくりと聞いてみた。

「うん。」

ゆうき君は頬を上気させて笑顔で答えた。

かわいいなぁ。

その笑顔につられて私も笑った。

女性は私に会釈をして、ゆうき君と広場の方へ戻っていった。
 
しばらく2人を後ろ姿を眺めた後、また単行本を広げる。