そして、私はいきなり力強く抱きしめられる。
「怖い思いさせてすまなかった。でも、ありがとう……」
耳元で優しく囁かれたら、泣いちゃうよ。
目尻からこぼれ落ちる涙が、頬を伝って流れ落ちる。
私は奈緒くんの胸に顔をうずめ、小声で話した。
「まさか、奈緒くんが中学生ときに総長様をしてたなんて……聞いてないよ……」
「俺が姫乃に話してないからだろ」
「額や腕の傷も、暴走族だった時のもの?」
「そうだ」
「耳のピアスの穴も、中学生の時にヤンチャしてた証なんだ」
「姫乃には隠しごとができないぜ」
中学生だったころの奈緒くんが、暴走族で総長だったのは驚いたけど、過去のことが聞けて胸がスッキリした。
「私が中学生の時はね、目立つことが嫌いで内気な女の子だった……」



