和泉ちゃんは私の肩をポンポンと優しく叩くと、すぐ横を通り過ぎて奈緒くんの所へ歩み寄る。

 ジロジロと全身を見回した後で、静かに話し始めた。


「噂のイケメン幼なじみ君。姫さまのこと、よろしくね」


 そう言うと、踵を返して歩き始めた。

 私の横を無言で通り過ぎた和泉ちゃんは、立ち止まって背中を向けたまま言ってくる。


「30分後、姫さまを迎えにくるから。それまで二人で話し合いなさい」


「でも……」


「姫さまはその姿で、あたしたちと後で写メを取ること」


「それでゆるしてくれるの?」


「すべて水に流す……って、みんなも言ってるから」


 背を向けたままの和泉ちゃんは、そう話し終わるとバイクに跨り、みんなを連れて姿を消した。

 私はこんな格好だし、奈緒くんと目を合わせて話すことができない。



 モジモジする私を見かねて、奈緒くんの方から近づいてきた。