生唾をゴクリと飲み込み、相手も緊張してるのが分かった。


「やめてくださぁ……やめなさいよ、アンタらっ!」


 きっと、初代総長のお姉ちゃんだったら、そう言ったと思う。

 でも、迫力に欠けるよね。


「悪いけど、アンタ一人で来たのか?」


 谷崎くんが聞いてくるから、私は正直に答えてしまった。


「そっ、そうです」


 違和感を察知した谷崎くんが、ニヤリと唇の端を吊り上げて言う。


「特攻の姫は知ってる、けど……大勢の俺たち相手に、色々と無理だろう。引っ込んでろ」


 矛先は、一人っきりで立ち向かおうとしてる奈緒に戻る。


「隣町で大きな組織の総長だったらしいな、噂で聞いたぜ」


 えっ、転校した町で奈緒くんが暴走族の総長を!


「二つに割れそうになったグループを、蜂屋が力で一つに纏めたらしいな。その時に追った左腕の怪我で、手の握力がほとんどないって聞いたぜ」