「なんかね、奈緒くんが急にいなくなって……色々あったんだ……」


「そうか……」


 離れた場所で過ごしていた時期のことを、奈緒くんは話そうとしない。

 私が中学生の時に、どんな学校生活をしていたのかも彼は聞こうとしなかった。


 お互いの空白期間は触れることなく、ひさしぶりの再開を楽しもうと決める。

 でも、いきなり私の家に来るってどういうことなんだろう。


「おばさんから、何も聞いてないのか?」


「お母さんから? えっ、なにがどうなってるの?」


 私は首を横に傾げて不思議顔。


「親が転勤先から戻ることになったんだけどよ、急に中止って話になったらしい」


「そうなんだ」


「だけど、俺は春から今の高校へ行くことになってたし」


 身の回りで色々あったおかげで、入学するのが一週間ほど遅れたんだね。



 奈緒くんも大変な思いしてたんだ……