「ううん、大丈夫だよ」

 涙をぬぐい、梓は笑みを浮かべた。

 でも和は心配そう。

 母が泣いているのはわかっただろうから。

「でも泣いてるよぅ……」

 心配されてしまったのは申し訳ない。

 でも和がこうして、自分のことを気遣ってくれるほど成長してくれたのを嬉しく思う。

 それに、これほど優しい子に育ってきているのだ。

 さらにそれは、自分がそういうふうに育ててやれたからなのだ。

「嬉しいからだよ」

 今度こそ、はっきり笑顔になっただろう。

 和は安心したような表情になってくれる。

「嬉しいのに、泣いちゃうことがあるの?」

 そこは子どもにはまだわからないだろうな、と思いつつ梓は言った。

「時々あるんだよ」

 涙が流れたことで、すっきりした気がした。

 母が言ってくれたことも、そこから自分が実感できたことも、すべて救いやこれからのことを決める力になってくれるだろう。