エリートSPはようやく見つけたママと娘をとろ甘溺愛で離さない

 ふと、母が口を開いた。

 静かに切り出す。

「気持ちだけじゃできないこともある、っていうのはその通りよね。なんだってそうだと思うわ。恋愛や結婚だけじゃなくても、仕事とか人付き合いとか……なんでもそう」

「そうだよね」

 母の思考がまとまってきたのだろうとなんとなく悟った梓は、小さく頷く。

「でも『気持ちだけじゃ続けていけない』って独りになるのを決めたのは、梓よね」

 そのあと言われたことには、どきっとした。

 そう、あのとき母に話した。

 シングルマザーとして産むのかどうかを相談したときのこと。

「う、うん。……そうだね」

 責められているのとは違うと思うけど、と思いつつも肯定する。

 母は梓のその反応を見てか、ふっと微笑を浮かべた。

「それなら、行動できるってことをよくわかっているはずよ」

 言われたことの意味が、梓にはすぐにわからなかった。

 きょとんとしてしまう。

「和臣くんも同じよ。『気持ちだけ』で梓のところへ来たわけではないんじゃない?」