その日は朝から気分が良くなかった。

 吐き気のほかに、頭がくらくらするような感じがあって、朝ご飯も食べたくない。

 起きたときから梓は思った。

 これではカフェの仕事は無理だ。

 ほぼ立ち仕事なのに、これほどくらくらしていたら、仕事中に倒れてしまう。

 それでは休むよりもっと迷惑がかかるだろう。

 仕方ない、と思ってスマホを手に取った。

 連絡は仕事のグループメッセですることになっているので、メッセージを入力する。

『すみません、体調がすぐれないので、お休みさせてもらえますか?』

 数分して、返事があった。店長からだった。

『わかった。風邪?』

 なんの気なしだっただろうし、それになにもおかしくない質問だったけれど、梓はどきっとした。

 まさか風邪ではないどころか、別の思い当たるふしがあるとは言えない。

『わからないです。ちょっと吐き気がして、立っていられない感じなので、病院に行こうと思います』

 曖昧になったけれど、納得はしてもらえたらしい。

『倒れちゃ困るもんな。わかったよ。明日は出られそうか、また教えてくれ』

『わかりました。すみません』

 そんなやりとりで連絡は終わった。

 梓は追及されなかったことと、また気を使ってもらえたことにほっとして、アプリを閉じた。